父のピアノが好きじゃなかった。
- えんど はっぴー
- 2022年6月23日
- 読了時間: 2分
5歳からバイオリンを始めた。
毎週レッスンがあって課題が出されるから、夕飯の後、父と一緒に取り組んでいた。
父は、ピアノ弾きたい症候群だから、夕飯なんかさっさと食べ終えて、2階でピアノを弾き始める。
僕と一緒にバイオリンの練習をする前の時間を、自分のピアノの練習の時間に充てていたのだ。
そのピアノの音は、いつしか、僕のバイオリンの練習開始の合図のように聞こえるようになった。
バイオリンを弾きたい気分じゃないときは、2階からのピアノの音を聞いて「これから練習かぁ、マジかぁ」といつも思っていた。
それでも、練習をしないと父に遠回しに怒られるから、仕方なく、父がピアノを弾きながら待つ部屋へ、重い足を運んだ。
気分が乗らない時や課題曲が難しい時って、なかなかうまく弾けないから、延々と同じフレーズを30分から1時間、弾き続ける日もある。
そんな時は、流石に痺れを切らして、泣いたり、不貞腐れたり、バイオリンを放り出したりしていた。
そうすると、父は優しい言葉をかけてくれるわけでもなく、叱責するわけでもなく、淡々と
「できるように神様にお願いするか、できるようになるまで泣くか、
できるようになるまで練習するか、どうする?」
といつも、問いかけてきた。
なんと、逃げ道のない問いかけだろう。
答えは、決まっているから、
不貞腐れて、涙を浮かべながら、バイオリンを弾いた。
この言葉は、僕の座右の銘でもなんでもないけれど、
そういう姿勢みたいなものは、身体に染み付いているような気がする。
うまくいかないこと、思うようにいかないこと、たくさんあるけど、
できるようになるまで、練習してみようと思います。
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